本

『初めて本を創る人へ』

ホンとの本

『初めて本を創る人へ』
杉山隆
コスモトゥーワン
\1260
2006.3

 ただのノウハウ本とは違う趣を見た。
 確かに、ノウハウは必要だ。こういうものだという事実については知りたいと思う。しかし、一般の人々が本を出版しようというところには、情熱のようなものも入る。そこに、ただ売れるか売れないかという尺度だけでなく、「このようなよい人なのだから、なんとか本を出して差し上げたい」という思いを描くような出版社があるとしたら、美しい話ではないだろうか。
 金さえ出せば本を出せる、として、本を出せばステイタスが上がる、というふうな客もいるという。札束でこちらの顔を叩くような勢いだが、その場合には断ると著者は言う。しかし、その人格に尊敬の念を払うとき、なんとか体裁はこちらで調えて、出版してあげたい、と思うのだそうである。
 あまりビジネスライクには語られていない本のようにも見えるが、本を出すということに興味のある人には、実に的確に知りたいことが記されていると感じる。ただのノウハウだけの紹介ではなくて、どうやらハートがそこに隠されているかららしい。
 かといって、誰でも文章が書けるというレベルにまでは、この本は関与しない。不可能ではないのですと言いながら、やはり苦手な人には、ゴーストライターの手を借りるべきだとはっきり言っている。何も、文章がうまく書けるようにその人を教育するのが目的ではないからだ。それはそうだろう。
 極めて現実的な指導の中で、この社会で本を出版するということの意味も、朧げながら見えてくるような気がした。
 それにしても、この本そのものは、出版の見通しとしては、どうだったのだろう。ちょっと、気になる。




Takapan
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