本

『独りでできるもん2』

ホンとの本

『独りでできるもん2』
森下えみこ
メディアファクトリー
\997
2007.2

 マンガである。
 三十代、独身女性。それは、作者と等身大の姿である。作者そのものと言ってよいのかもしれない。
 その立場の女性として、結婚をつねに視野に置きながら、それができない現実を生きているという状況が、失礼な言い方かもしれないが、半ば自虐的に描かれている。
 ほんとうにそこまですべてを結婚ということにしか結びつけられないのだろうか、という疑問も浮かびながら、この日本社会で生きている以上、誰からの視線も、結婚結婚と追い立てているかのようにしか感じられないというのも本当だろう、という気持ちにもなってくる。
 ほんとうに、それを軸に、生活が展開していくわけだ。
 もちろん、すべての女性がそうであるなどというつもりもない。だが、仕事が一番と言えることもなく、他の大きな目標があるわけでもなく、やはり奥さんになって云々、という思いがちらついて仕方がないというのは、多くの共感を得る視点なのかもしれない。
 病気になっても、部屋の中でトラブルがあっても、すべて「独りで」できるようになっていく。それが、どこか寂しく憂鬱である、というのが全体を流れる空気である。
 はたして、日本社会の指すような眼差しがそうさせるのか、それとも誰かと共に生活したいという本能めいたものがそうさせるのか、それは私には分からない。でも、心理的にも社会的にも、こうした女性の悩みが描かれているという点で、それをとやかく他人が言えないというのも、また確かなのである。
 さらに、離婚で独身になった人や、子どもと二人あるいは三人などで生きていくことになった人を含めると、さらにこの「独りで」の世界が広がっていく。
 おひとりさま、という言葉も世間で流行った。もしかすると、そうまでして結婚するべきだと思わせるほどの男性が、いなくなったことにも原因の一つがあるのだろうか。
 途中から、なんだか笑えなくなってしまった。あまりにもリアルに、心理が描かれているように感じたからだ。でも、ある種の共感も覚えてしまうのは、やはり作者の描く世界がリアリティをもっているからなのかもしれない。
 1は読んでいないが、2だけでも十分読める。




Takapan
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