本

『秘伝 大学受験の国語力』

ホンとの本

『秘伝 大学受験の国語力』
石原千秋
新潮選書
\1260
2007.7

 入試国語に関わる五冊の本をもつ著者の、一区切りになる本だという。
 たんに、国語の入試がどうだという意味で著しているのではない。日本という国が――これは国家や公務員がという意味にとどまらない――、どういう国語の力を次世代に望んでいるのか、という理念あるいはその現状を暴くために、現場と過去の姿そのものを明らかにしている。
 私はとにかくおもしろくて仕方がなかった。
 中学入試から高校入試、そして大学入試と、分かりやすく書き分けてきた著者である。今回大学入試だけでまとめているかというと、そういうわけではない。一般の高校の国語の授業が中学入試レベルであることをはっきりさせたり、旧制高校の入試問題のほうが、旧帝大の入試問題よりも難しいからくりを示したり、実に興味深い内容である。
 その上で、受験国語が何を求めているかということ、それを解くためには何をすればよいかということを、まさに入試問題を作成することもあった者として、著者が暴露していく。
 国語が道徳教育であるということは、私はこの著者からすでに聞いて知っていた。また、二項対立による読み方や、要約並びに翻訳能力についての指摘は、私自身が小中学生に国語を教えるときに、充分参考にさせて戴いた。このたびも、大きな刺激を受け、指導に役立てたいものだと思う。
 私もまた、評論と小説により読み方を変え、攻め方を変えるべきことを、生徒にはっきり意識させようとしている。しかし、そんな私の現場でのやわな空気の流れによる小手先の技術とは違い、この本は、徹底的に原則を貫こうとしている。実に論理的であり、実に原理的である。
 学生も読んでもらいたい。そして、塾などで国語を本音で指導していく立場にある人は、読まなければ損だとも言いたい。
 まだまだこうした指摘を続けて戴きたいし、日本の国語教育について、的確な指摘を投げかけていってもらいたいと願う。




Takapan
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