本

『図説 教育の歴史』

ホンとの本

『図説 教育の歴史』
横須賀薫監修・千葉透,油谷満夫著
河出書房新社
\1890
2008.10

 写真資料が多く、美しい写真を交えながら、あるテーマについて紹介していく。
 今回、秋田県にある秋乃宮博物館からの資料を用いて、明治期以来の学校の様子を生き生きと伝えようとして編集されたようである。
 その意味では、タイトルの「教育の歴史」だけでは、伝わりにくい部分があるかもしれない。この本は、明治以降の近代教育の変遷なのである。
 着眼点がいいと思う。えてして、教育の歴史となると、お上が決めた制度を示してそれで終わり、という程度のものになってしまうであろう。しかしここには、コレクションされた多くの資料、たとえば当時の子どもの絵日記や通信簿そのもの、当時の写真、当時の教科書や物品の写真が並べられる。
 ところどころコラムのように、やや長文の解説が入り込むが、全体的には、資料の写真とその説明が中心である。
 実に貧しい、粗末な姿も映し出される。明治期にはとくに、家の農作業のために学校を休むだの、学校に行けないだのといった面はあるものの、しだいに学校というものが世に認められていくに従って、子どもたちの間に、学校でいかにも楽しげにしている写真が多くなってくる。やはり学校は、楽しかったのだろう。
 翻って、今学校は楽しいのかというと、そんなことはないように予想される。不登校の問題もあるし、いじめの問題もある。それを一概に責めるわけにもゆかないが、私たちはこの明治以来の子どもたちの姿に、何かを学ばなければならないだろうと思う。かつての学ぶ楽しさの時代から、今はそこから逃れようとする時代になっている。
 学力低下が問題視されてからもうしばらくたつ。学力だけを見つめていても、そこだけ鍛えようとしても、なかなかうまくゆかないものであろう。子どもたちの世界を、全体として支えることを頭に置いて初めて、子どもたちを取り巻く問題が何であるのかを知ることができるというものだろう。今後の教育がどこへ行くのか、それは残念ながら予想がつかない、と監修者は言う。
 これからの教育世界がどうなっていくのか、それが今明確に見えるというわけでもない、とも著者は言う。誰にもはっきり分かるというわけではないのだ。でもそういう時にこそ、歴史を学ぶ意義は大きい。教育の問題を解決していくためには、まずこれまでの歴史を振り返ることも必要なのではないか。監修者に合わせて、そんなふうに考えてみたいと思う。教育の従来の歴史を、より生き生きと感じさせて、どうしてそのようになっていったのか、考察してみるとよいだろう。
 これだけの資料を蒐集した油谷氏とその美しい写真たちにも、感謝の言葉を贈りたい。




Takapan
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