本

『エコ*文房具』

ホンとの本

『エコ*文房具』
平田美咲作
汐文社
\2415
2010.7.

 エコというのは、注目度を高めるための枕詞のようなものであろう。別にそんな言葉はなくったっていい。サブタイトルにあるように、ただ「お菓子のパッケージで作ろう!」でよかったと思う。
 そもそも、誰もが以前は、身近なそういう空き箱などを使って、自分にとって役立つものをこしらえていたのだ。それが、今や百均様々となって、何でも105円で手に入るようになったため、誰も自分で苦労して作ろうだなどと思わなくなった。
 いや、作り方すら分からないというのが実情であるとも聞く。「お茶って、自分で作れるんですか?」という声を聞いたときには冗談だと思ったが、本当の驚きであったと分かると、私が驚いてしまった。
 グリコ・森永・明治・ロッテ・不二家、その他お菓子やシリアルのメーカーの宣伝になっているかのような表紙である。要するに本当にそれらの空き箱からできているのだよ、というアピールであるが、それでよいはずだ。へたに無地の箱を示してNHKみたいに作ると、本来の目的から逸れてしまうものがある。子どもが見て、この通りに作ってみよう、と思わせ、またできるようでなければならないからである。
 しかし、子どもとは言っても、小学校低学年だと説明そのものが読みづらい。やはり中学年以上が想定してあることが、説明の漢字のふりがなを見て分かる。作る方法や内容を見ると、私にはどうも、大人相手に作り方が提示されているように思えてならないのだが、どうだろう。あるいは、子どもが親と一緒に作ろう、という機会をつくりだしてくれるための企画なのかもしれない。
 こうしたお菓子の箱でできるものとしては、栞やマグネット、ファイルから筆箱にまで至る。とくに個人的には、パラソルチョコのまんまに見えてしまうボールペンというのがイカしていると思った。これはそのまま商品にもなりかねないほどの味がある。
 お菓子たちは、2010年春ごろのデザインであるとわざわざ記されている。ということはつまり、この本は実に短い期間で出来上がったものだということになる。これが私には驚きである。むしろこれくらいの短い期間でつくるというのが、昨今の本の世界の常識なのだろうか。
 さらに言えば、こういう本は、この通りにすべてを作るに留まらないのがよいところである。このような説明に刺激を受けて、きっと、他の箱でこんなものができるのではないか、とアイディアが読者の心に浮かんできて、また新たな文房具が各地で生みだされていくこと、それこそが、著者の望むところではないだろうか。そのための基本的技術と知識、そしてきっかけを十分与えてくれるものとして、このような本は貴重である。
 私たちは、もっと自分に必要なものを、自分の手で生みだしてよいはずである。私は、メモ帳は裏紙を切って束ねて使っている。通常それで全く問題が起こらない。メモ帳は買うべきもの、と思い込んでいるような人がいたら、残念だ。ペン立ても、しばしば牛乳パックを途中から切ったものである。その周囲を可愛く飾ろう、と思わないところが、私のがさつなところである。




Takapan
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