本

『イースターの祈り』

ホンとの本

『イースターの祈り』
INTERPRETATION 88
聖公会出版
\2000+
2015.6.

 力の入った論文集であり、中には専門的なものも含まれる。だが、基本的に読みやすい。本書は2011年が元であるというから、全く以てホットであるとは言えないかもしれないが、新しい動向が分かる、有意義な本である。北アメリカでは60年以上の伝統ある雑誌であるという。聖公会出版が近年日本版の事業を引継ぎ、世に問うているそうだ。
 私は、イースター前に恵を受けようと思い、イースター特集のものを見つけて求めた。復活の出来事をどう受け止め、また活かしていくか。私たちキリスト者一人ひとりが問われている。
 独立した論文の集まりであるからどこから読んでもよいのだが、どうしても最初から順に読んでしまうわけで、そのとき最初のものに私の心はすっかり捉えられてしまった。「イースターにおける教会の姿」は、架空の話としていくつかのシーンが紹介される。それがまた切ない。日本ではこのような情景は見られないだろうと思われるのだが、たぶんアメリカあたりではありそうなことではあるのだろう。その短編小説あるいはショート・ショートと言えるような教会物語に、涙すら流れた。そうして文学的に、イースターとは何か、ということを、読者が自ら選び取ることができるように向けるのである。
 次は、復活について沈黙を守るマルコによる福音書を取り上げ、その沈黙の背景を探っていく。そして、その問題を解決しようとするのではなく、読者あるいは信仰者である私たち一人ひとりが、その沈黙を受け止め、自ら決断へと導かれていかなければならないとする。こうなると、もう学術的なものだとは言えない。立派な信仰の勧めであり、生活へのメッセージである。
 芸術的な側面からイースターについて深みのある話をもちかけたり、説教者の辛い日常からイースターをどう語るかという内輪話のようなものを呈したり、幅広い関心から私たちへとイースターの光が当てられる。どれ一つとして、ありきたりの福音説教のようなものはない。その意味で、実に面白い編集であったと感じる。
 こうして標題の特集記事が3分の2ほどを語ると、あとはいつも、一定の聖書箇所についてのテクスト解釈があり、見聞の幅を拡げることができて読者にはうれしい。また、その当時に出版された本の書評がいくつか並び、欧米での動向の息吹を感じることができる。
 なかなか有意義な誌面である。私はあるルートで、格安でバックナンバーを入手することができたので、機会があれば手にとってみると、楽しめること請け合いである。気に入った特集のものがいいと思う。




Takapan
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