本

『デジタルメディア・トレーニング』

ホンとの本

『デジタルメディア・トレーニング』
富田英典・南田勝也・辻泉編
有斐閣選書
\1995
2007.4

 サブタイトルは「情報化時代の社会学的思考法」となっている。
 社会学者たちの懇親会の席上で、こんな本が、という声が生まれ、その勢いでできた本であるという。こういう動機は、たしかに熱意がこめられている。力を感じる。学問とか、立場とかいうことでなく、「これだけは言っておかなきゃならん」との思いが詰まっている。
 しかし、構成は実に練ってある。過去のメディアと現在のメディアについて十分基礎知識を養っておいて、ここから、未来のメディアについて考えるという手順を採らせようとしている。また、その際、メディアが自分にとり、敵なのか味方なのか、どちらかの立場にはっきりと立って考えていくように仕向けている。このような注文は、実に適切である。人は、どうあっても、自分が正しいということから動かないのであり、そのために本を読むときには、第三者として狡く振る舞おうとするからである。
 そもそもデジタルメディアとはというところから始まり、ケータイ、ホームページ、インターネット、デジタル文化、ビデオゲームと多様にわたっていく。これが現在である。
 次に、過去を振り返る章を設け、最後に、今後を考える。
 学生たちが社会学的思考法を身につけるためにも、こうした最先端のことにどのようにアプローチしていけばよいのか、見本が提示されるのは、役立つことであろう。なにせ、その現場にすでに私たちはある。そこで何かしらの考えを各自が抱いている。そのうえで、それが学問的と称されるようなやり方で、調査され探究されるというのである。たんなるコメントと、学問との違いも、やがて味わうことであろう。
 それはさておき、私たちがその中に溶け込まされているという意味で、まったく見えていないこの現状について、実はたいへんな危機をも背中合わせてしているという意識を、私たちは本当にもっているのかどうか。この本に記されていない領域、つまり社会学的ではない領域においても、こうした思索は求められてしかるべきであろう。
 そんな勢いが、社会に起こされることを願っている。




Takapan
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