本

『デザインのルール、レイアウトのセオリー。』

ホンとの本

『デザインのルール、レイアウトのセオリー。』
伊達千代
MdN
\2500+
2010.7.

 kindleで販売していた。だが当然、これをkindleで読む勇気はなかった。比較的最近のことだが、kindleの電子書籍が、パソコン画面で読めるようにソフトが提供されたので、これはもうパソコンで見るしかないという前提で、購入した。
 デザインには、知識が必要である。なんとなく天性のものだけでやり遂げられる人は、歴史上数人しかいないのではないか。しかしまた、理屈だけで作品ができるはずもなく、完成を育てるために、多くのよいものに触れるという体験も必需であるとされる。
 この本は、贅沢にも、その二つを同時にもたらそうとしているように私には見えた。
 理論がしっかりしている。見開きでひとつの理論の実例を提供し、その解説をする。次の見開きで、その展開例が紹介される。この構成で一冊ができあがっており、ひとつひとつの理論が肯け、またそれを裏打ちするその実例というものがたいへん美しく、的確である。大いに参考になるし、よいものを見せてもらったという印象が残る。
 きれいな色だ。やはり私の白黒のkindleではどうしようもなかったであろう。その写真の多さからしても、kindleのメモリーを支配してしまいそうなので、パソコンで正解だったのだ。説明の文字が細かい。これは、グラフィック的な一般書を思い浮かべて戴ければお分かりだと思うが、実例の写真や画像を大きく示すため、しかも説明はそこそこ詳細でなければならないため、文字は非常に小さく置かれている。これをkindle画面で見るというのは、読むなと言うに等しい。だが、実のところ、パソコンのそこそこ大きな画面でも、この文字がなかなか見づらいのである。いちいち拡大しなければじっくり読めない。それでも、ただ眺めているだけでもいいので、どこかファッション雑誌をぱらぱらめくっているような錯覚にも襲われる。だとすれば、センスがあり美しい雑誌だ。
 しかしそれでもなお、丁寧な説明と、用語の解説の見やすさは逸品だ。素人でも無理なく読み進むことができる。プロには物足りないかもしれないが、少しばかりデザインをかじった者にとり、これらの解説はたいへん有用である。
 教会のポスターや案内などをデザインすることがある。私なりに勉強はしたが、独学に過ぎない。そのような者にとり、こうした適切な指導を仰ぐような機会は、直接人によってはなされないため、不十分ではあると思うが、この本はたいへん有難い。中には、少しばかりWordがいじれるようになったから、自分は教会の案内を何でも任せてほしいという、自己愛の強い人もいるようだが、デザインのなんたるかについてまるで無知で、いかにも素人っぽく文字やイラストを並べて、美しいよいものができたと悦に入り満足しているのを見ると、いくらなんでも、もう少し何か経験値を増やしてほしいと願わざるをえない思いがする。学びは大切なことだ。そして、よいものをよいとして捉える前提でたくさん見ることだ。
 画材や素材の取り扱い方まではこの本では教えてくれない。とにかくただ見た目をどのようにするのがよいのか、形、デザインだけに特化した形で知識と見本を提供してくれている。それだけでいい。その方面については、この一冊があれば事足りると言えそうなほどに、様々なデザインの基礎が説明されているように見える。それでも、なかなかセンスを養うことはできない。やはりどこか天性のものがあるだろう。いくら頑張っても「もっさい」デザインしか生み出せないというのが素人の浅はかさであり哀しみであるのだが、でも、一定のタブーを知っているだけでも、明らかな失敗を避けることは可能だ。こういうときには理論や知識というものは貴重だ。自分がいいと思うものはいいはずだ、というような、近代知のなれの果てのような悪しき個人主義がはびこっているように見える世界の中で、謙虚に学ぶということを、こうした機会に覚えていくことは大切なことである。
 いや、そんな堅いことを言うこともなく、ただ眺めていけば、目の肥やしになる。見ているだけで気持ちよいし、驚きが与えられる。へたに目的意識などをもつこともなく、そのように楽しみつつ、できれば何度も通しで見ていきたい本、あるいは図鑑のような、素敵なデザインの本であった。
 もう、パソコンのデスクトップに常駐させておくくらいの価値のあるものとして、私のパソコンのメモリーを食っている毎日である。




Takapan
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