『しのびよる電磁波汚染』
植田武智
コモンズ
\1470
2007.2
電車の中でケータイを使われると、気分が悪くなる。
もしかしたら、精神的なものなのかもしれないが、頭痛らしいものを感じるのも嘘ではない。家でパソコンに向かっているときには感じることはないが、電車の中ではやけに感じる。
鉄で囲まれた空間は、電波を縦横に反射する。その原理によると、あちこちでケータイが使われることによって、内部の電磁波は強烈な程度に上がるという。
そもそも電磁波の問題いち早く警鐘を鳴らし続けている著者であるが、かなりはっきりものを言うのも、切羽詰まった状況なら仕方がないと思われる。
えげつない商売をしている業者に対しては、質問をする。悪意ある回答であったがゆえに、その企業の名前もウェブサイトも公開してくる。問い合わせた総務省の担当とのやりとりも、すべて明らかにされる。
言ってもいないことや、秘匿すべき事柄について、公開するのはまずいだろうが、こうした公的な応対については、どんどん公表するとよいと思う。警察が全く話を聞いてくれないために人の命を失ったという例がいくらもある。そういうときにも、公務員だからと身分が守られている対応をしてくるのに対して、庶民は、何もできない状況である。
さまざまなデータを測定した上での議論には、説得力がある。だが、この本の中でも触れているように、しょせん、利益優先の民間機関が、ケータイは危険だ、などという報告をするはずがない。裁判官がぐるになるようなもので、小市民は何の抵抗もできないものである。
ケータイに限らない。マンションの部屋が強烈な磁場になっているという実例から、この本は始まる。ちょっと設計がいい加減であると、そんなとんでもないことすら起こるわけである。
最終章「身近な電磁波の避け方」は、コンパクトで実際的な、電磁波から身を守る知恵が記されている。これは役に立ちそうだ。
見えないものを信じない。だからこそ、平気で電波を飛ばせる。見えないところに、大切なものがあることなど、いくら金子みすゞの詩を読んでも、それだけではだめである。見えないものがとんなにか人を苦しめているのか、当人はまるで知らないというのが通例なのである。