本

『大豆の大研究』

ホンとの本

『大豆の大研究』
加藤昇監修
PHP研究所
\2800+
2009.12.

 子ども向けの、おそらく図書館用の頑丈な本である。「体にいい、地球やさしい」という冠がついたタイトルであり、「パワーのひみつを探ろう!」とタイトル下にある。子どもに伝え、また誘うためになかなかすぐれたコピーと言えるだろう。
 いつもながら、子供向けの説明書というのはいい。社会機構だと、大人には少し物足りないこともあるが、それでも改めて襟を正す効用があると思われる。これが科学的なことになると、子ども向けと言ってもあなどれない。どだい、専門的な内容になると、たいていの大人はついていけないため、子ども用のものが案外ちょうどよいのである。
 というわけで、私もこれを見て「へえ」と思うことしきりであった。
 大豆の栄養が最初に明かされる。それから味噌や醤油などへの利用が説明され、しかも続いてそれらを簡易的に作る方法を紹介している。これを見ただけで、夏休みの自由研究として実行できるだろうと思う。大豆はまた、食糧危機に対しても期待のできる素材であると紹介され、遺伝子組み換えについてもできるだけ偏見をなくすようにと配慮されている。
 さらに付録のようにも見えるが、発展学習的な資料が巻末に集められており、六年生の学習に相応しいのではないかと思われる。
 私はこの一年くらい、「大豆飲料」を飲んでいる。豆乳ではない。おから成分も溶かしこんで液体にした商品である。食物繊維量が、豆乳とは断然違う。どろっと濃く、初めて口にする人には、なんだこれは、と叫ばせるかもしれない。しかし不思議なもので、慣れるとこれが快感となる。むしろ、普通の豆乳を口にしたとき、なんて薄くて頼りないんだという気持ちになる。
 大豆についてはいろいろ評判になることがあるが、実のところ日本食の食卓では、大豆は普通にたくさん使われているはずである。いや、はずであった。それが近年おかしい。食は、その人を根柢から作り上げる。また、毒とは異なり、すぐに効果が目に見えるというほどのことがない。だが、これくらいいいだろうという思いが、いつか明確な結果となり現れるのだが、これが見えたときにはもう時すでに遅しということで、取り返しがつかない状態になっているということになる。子どもとしては、それが後で分かるのであるし、大人も、やがて年をとったときに後悔することになる。
 大豆は、そういう事態を避けるための恰好の素材である。これを強調するこの本はまた、アレルギーについても触れている。よく読むことが必要だ。だが、その問題も、加工品となると影響が出なくなる傾向があるという。とにかく子どもの目に触れるものとして、必要なことを分かりやすく伝え、見せる。誤解を与えないように配慮する。ということはまた、大人には百発百中伝わるということである。
 食文化は命の基本である。その大切さを訴えるということは、命の教育にほかならない。そして、舌の喜ぶものをほしいだけ食べればいい、という安易な破滅への道から、子どもたちを救わなければならない。砂糖成分1/10のペットボトル飲料を毎日飲むような子どもたちは、今や珍しくないどころか、大多数であるように見えるのだ。
 最後に、今回私も、「大豆」が何故「大」の字を使うのか知った。だから「ものの本」はやめられない。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system