本

『中耳炎がわかる本』

ホンとの本

『中耳炎がわかる本』
鈴木光也
法研
\1575
2007.7

 我が家に滲出性中耳炎の子がいるために、私たちも最初はずいぶん戸惑ったものの、だんだんその病気のことを知るに至り、それなりに落ち着いてきた。本人はその弱さの中に悔しさのようなものも感じることがあるだろうと思うが、気づいた後には、悪い対応はしなかったつもりだ。
 医学書を見ても、何かのついでのようにしか記されていない中耳炎のことが、まるまる一冊のテーマになって、ここに実った。ほかにもそういう主旨の本はこれまであったかと思うが、この本は、なによりも分かりやすい。タイトルの通りである。
 耳のことに、しかも中耳炎とそれにまつわる病気に限定しているために、伝えるべき知識も限られていることだろうに、それが細かく記述されているために、読む素人の側からすると、十分詳しく説明されているという感想をもつのである。
 まず、耳とは何かというあたりから説明は始まる。そこには、聴覚のほかに、からだ全体のバランス感覚も関係することに改めて気づかされる。そのとき、歩いていても景色が揺れない訳を問うことから、耳のバランスの不思議な仕組みについて説き明かされ、そのことで、この本の魔術にかかったようになってしまう。
 子どもがかかりやすい病気であるため、その仕組みの説明も不可避である。単純明快な図解が随所にあり、説明も大切な点は繰り返されるために、親切である。こと医学の本であれば、妙な誤解を与える表現はまずい。それへの配慮であるのかもしれない。
 子どもが中耳炎になる前にこのような本に巡り会っていれば、とも思うが、それは事実上無理である。ただ、中耳炎になった家族が現れてからでも、すぐにこのような分かりやすい説明に出会えれば、対処の仕方も違うだろう。説明の仕方も、構成も、素人に十分すぎるほど詳しく、親切になされていた。
 ただ、いつも言うが、ちょっと調べたいときに、索引がないのが寂しい。目次に書いてあると言われればそれまでかもしれないが、同じ症状が、別の病気で出てくるとなると、どこを読めば的確に現状を理解できるか、といった問題も起こる。やはり、調べたくなった人の立場に立った意味での、索引が求められると思う。




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