本

『鑑賞のための キリスト教美術事典』

ホンとの本

『鑑賞のための キリスト教美術事典』
早坂優子
視覚デザイン研究所
\2310
2011.3.

 キリスト教や聖書を知りたいというふうな特集号の発行が続いている。何かしら気になる人は少なくないと思う。信仰するためというほどの意気込みはないものの、知らないでは済まされないのだという気持ちは、現代社会を生きる私たちにとり、当然あってしかるべきだろうと思う。中には、自分が勝手に思い描いたキリスト教のイメージだけで満足し、時にやたら批判をする人もいるが、むしろそうした人のほうが、キリスト教が恐ろしいのではないかとすら邪推する。多くの人はそうではない。何だろう、と素朴に関心をもってくださる。
 そういう人のためには、たとえば建築物としての西欧の教会堂は面白いし、さらに親しみが沸くのが、おそら美術作品であろう。とくに絵画は、有名なものの多くが聖書を題材にしており、それを鑑賞するためにも、聖書についてなにがしかのことは知っておきたいという気持ちになるのではないだろうか。
 そこで、このキリスト教関係の出版ブームである。
 この本も、それに乗ったものの一つであるかもしれない。だが、これは他とは一線を画するものと言ってよい。真面目な図像や聖書の解説は、もちろんある。だが、専門的ではない。この、絵本的な落書きによる、どこかふざけたマンガが、たまらなく楽しい。ふざけてはいるが、嘘が書かれているようには見えない。少しばかりシャレの分かる読者であってほしいとは願うが、これは聖書のことがよく分かる解説書としてもなかなか優れていると言える。というのは、説明の言葉が殆ど最短ではないかと思われるほどに簡潔なのである。それでいて、要点を実によくまとめている。素朴なイラストも、笑いを意識してはいるものの、親しみやすくするという目的のためであることを外しているとは思えない。
 いやはや、これは優れものである。聖書を読んでも難しいと感じ、信仰の肝腎の精神は持ち合わせているものの、聖書の様々な点についての知識に乏しかったある女性は、この事典を覗いてみて、初めていろいろなことが分かったとご機嫌であった。それを聞いて、私はこの本が本物であると確信した。
 タイトルには「キリスト教」が入る。聖書に限らず、伝説のもの、それからカトリック教会の伝統が多々含まれている。適切な範囲ではないかと思う。それがあってこそ、世界文化としてのキリスト教を理解することになる。プロテスタントの私などとくに知らないことが多いから、この読みやすさ、取っつきやすさが、それらとの距離を縮めてくれる。
 いくつかの大きな項目については、4コママンガでストーリーが紹介されている。聖書は人間のすべてを含み入れるものであるから、中には「おとな」向けの話題も多い。とくにこのコママンガには、成人的な話題と絵、あるいはオチが多いので、この本そのものを、お子様に勧めることはできない。だが、「おとな」が見るには悪くない。そうした内容から目を背けること自体、聖書の真実から目を逸らすことにもなりかねないからである。それが人間の罪なのだ。人間とは、そして自分とは、そういう存在なのだ。
 著者については、調べてみたがよく分からない。カトリック畑の人ではないかと思うが、美術について相当に詳しいことは間違いなく、さらに絵本を著しているようだから、なるほどこのイラストがくるわけだ。合点した。




Takapan
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