本

『病気のしくみがわかる事典』

ホンとの本

『病気のしくみがわかる事典』
NHK科学・環境番組部編
大泉書店
\1470
2008.3

 NHKためしてガッテンの番組が冠してある。いかにもその番組のように楽しくゲストが……というわけではなく、番組スタッフがその調査をまとめて解説したというもので、きわめて有効度の高い本となっている。
 文字がぎっしり、というわけではない。イラストがふんだんに用いてある。からだのメカニズム、病気の起こりなどの理解のためには、写真よりはイラストのほうが数段いい。そこに徹底している。もちろん、写真の入手方法などの問題もあったのかもしれないが、一読して理解できるというのは、やはりイラストのなせる技だと思う。
 何々を食べると癌になる(ならない)、などという、洗脳的な情報が、時に全く信用がおけないということは、捏造番組で明らかになったはずなのだが、人間はその手の情報に実に弱い。健康番組も、面白くお笑い系の司会者が笑わせて知らせているのは、しばしばそのような形である。ためしてガッテンという番組は、必ずしもそうではなく、自分の生活に役立て様々な事柄に理由のあることを納得して理解するというスタンスに立つ、やはり番組としては健全な姿を続けている、貴重な番組であると捉えている。
 病気にメカニズム。要するに機械はまさにそうなのだが、その仕組みや原理を知っていると、いざ故障したときに、どうすればよいのかが分かる。なんか分からないがこの辺を叩くとテレビが映るようになる、といった半世紀前のギャグは、今のコンピュータチップスの時代にはおよそ通じないにしても、まだまだ手作業で挑める分野は生活の中にたくさんある。何が人を病気にさせるのか。それは、考えてみれば、実に当たり前のことばかりなのだ。偏った食生活を続けること。朝の光を浴びないこと。タバコを吸うこと。そんなことは、からだに傷を付けているのとまさに同じはずである。
 この本は、そうした当たり前のことを、ていねいに教えてくれる。ついついやらかしてしまうことが多い中で、こういう生活習慣はよくない、という頭からの理解も、小さな積み重ねのようだが、ほんとうに大切なのだと感じるようになる。そして、メカニズムを知ることにより、これはいけない、あれは推奨できる、などと判断するだけの、読解力と想像力、そして推理力を、読者は身につけなければならない。自分で考えたくないものだから、誰か有名人がテレビで言った結論だけを信じるしかしない、という生き方は、かなり危険なのではないか。
 ダイエットの仕組みと危ないやり方を指摘するこのような本が読まれるのか、それとも一ヶ月で何キロ痩せたという商品の宣伝に飛びつくのか、その別れ道が、教育の成果を表しているのかもしれない、とさえ思う。
 肝腎の本の中身には触れられなかった。昔風に言うと、「ためになる」ので、これはお薦めだ。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system