本

『頑張る日本の文房具』

ホンとの本

『頑張る日本の文房具』
「シリーズ知・静・遊・具」編集部編
ロコモーション
\1680
2006.6

 文房具には、惹かれる。
 特別に高価というわけでもないし、学生でもなくなれば、さして使うわけではないような気がするものだが、それでも、惹かれる。
 手にフィットする感覚。
 目を見張る機能。
 いや、ストレスを感じないようにあることができる、という、およそ気づかないところにさえも、道具を製作する人々は細やかな神経を使い、実現しているのだ。
 ペンが掠れないということだけでも、おいそれとはできない性質の工夫が練られていることに、私たちは普通気がつかない。
 さて、この本は、日本の文具メーカーを一つ一つ訪ねて、その得意とする分野を表立たせて、その開発にまつわる話や歴史をリポートしていくというものである。文房具マニアにはたまらない話が聞けるし、その歴史的作品の羅列を見るだけでも、よだれが出そうになってくる。
 繰り返すが、何にも使用感を覚えないように使用できるということが、その文具の最大の賛辞であるという考え方に注目したい。特別な機能は、えてしてあまり役立たない、あるいは、すぐに厭きるということがある。しかし、書いていて疲れないとか、掠れないとかいうのは、気づかないけれども、たいへんな創案と努力の下に実現する美点である。
 ノートやルーズリーフの紙質も、日進月歩改良がなされているという。新しい筆記具が登場すると、それに対応できるかどうかが問われるというのである。
 製作者が自己満足して、「これがいいのだ、伝統だ」と考えて売りつけるというのも、ひとつの魅力かもしれないが、現状に合わせて他の文具との相性を考慮しつつ自らを改良していくというのも、現実的で実に誠実なありかたである。
 教会とか、人間とかも、こうした姿勢は見習って然るべきではないか、とも思われた。




Takapan
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