本

『文房具フル活用術』

ホンとの本

『文房具フル活用術』
榎本勝仁
辰巳出版
\1260
2008.6

 学習塾を経営するようになった人が著者。成功している人だが、まだ30代のようだ。
 わざわざタイトルに「カリスマ家庭教師」などと付けるのは、私の趣味からは遠いが、売らんかなの出版界ではそうするものなのだろう。自分で「カリスマ」と呼ぶようなことは、半ば自己矛盾のようなものだが、まあこれも商売の方法ということで。
 さて、経済人出身の著者であるからこそ、なのかもしれないが、学習法を教育的観点からというよりも、ツールのほうから覗いてみた、案外面白い試みとなっている。
 つまり、ビジネス界においては、自己啓発というのは実に当然通る道なのであって、自分を高めるためにどういう道具をどのように使うかというのは、多くの人の関心を呼ぶ事柄である。だが、なぜか受験産業において、学習道具をどう活用するかという点については、あまりに関心がなかった。具体的にノートはこのようにとるとよい、という程度でさえ、結局は個人の好きなように、という感じで、教えるほうがノウハウを伝えきることができていなかったのである。いや、はっきりいうと、ひたすら勉強さえすればよいのであって、どのように文房具を使うか、ということなどは、全く関心を寄せなかったのである。
 それは恰も、ウサギ跳びをしろ、滝に打たれて精神力を鍛えろ、そうすればホームランが打てるようになる、としごいたいにしえの運動部のようなやり方である。
 しかし著者が提供した視点は、いわばスポーツ科学を取り入れたような画期的なものがある。もちろん精神的なもので高めていくというものもあるのだけれども、より手段に絞った観点ということで、学習法の指導としては新鮮に見える。
 ただ、個人に適応するかどうかという問題があり、やはり手段も、その子次第というところがある。合う子もあれば、合わない子もいるのだ。ただ、私も高等教育になるにつれ実行し、また感じたことだが、自分に合う学習法というのを、様々試し、失敗も重ね、ついに自分にとってベターな方法を見出していくものなのである。いや、私はそこに、むしろ自分がこのような存在であったこと、自分がこのような性格であったこと、を自ら認識するようになる、とさえ思う。
 さて、内容についてはここまで全く触れてこなかった。あまりにそれを紹介すると、著者の怒りに触れるかもしれない、とさえ考えているのもあるが、一度覗いてみてのお楽しみとしておこうと考えたのである。
 ちょっとした文房具で、ふだんと違ったことができること、そういう知恵が見開きに並べられている。著者が意識したのかどうか分からないが、これもまた、ビジネス書のパターンである。そこに特別な秩序や原理があって並べられているわけではない。
 全部取り入れる必要などない。ぱらぱらと見て、これは自分にとって面白そうだと感じられたことを、やってみたらよい。そうした、カタログ的な本である。また、見ているうちに、自分だったらこうではなくこのように……とアレンジしていくようになったら、ある意味で本物である。そのようにして、自分で考えていくことの触媒となったのなら、著者としても本望だろう。
 勉強法という点で、案外受験生のお父さんお母さん方も、仕事や家事に役立つやり方がそこにあるかもしれない。
 私だって、この本を見て、受験指導ブログに、道具について教えていくことを思い立ったほどなのである。もちろん、この本の内容を安易に引用するつもりはない。私だって、様々な文房具での工夫もしているのだから。




Takapan
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