本

『ねえ、ぼくのアスペルガー症候群の話、聞いてくれる?』

ホンとの本

『ねえ、ぼくのアスペルガー症候群の話、聞いてくれる?』
ジュード・ウェルトン作
ジェイン・テルフォード絵
長倉いのり、門眞一郎訳
明石書店
\1050
2006.7

 アスペルガー症候群の子をもつ母親が、周りの人への理解を仰ぐために書いた文章が、本になった。と言っても、薄い本であり、たちまち読めるものである。けれども、そのようなことが分かるようになるまで、その母親自身も労苦したであろうし、今度はそのことが人々に理解されないゆえのもどかしさ、というものも大きいに違いない。
 人の感情が理解できないのだという。さらに、感情的な側面から意味を理解すること、つまりたとえば「察する」ということが、身についていないのである、とも。学習上の障害でもあるだろうが、感情を必要としない科目においては、たいへん優れた点数も取れるのだそうだ。ただ如何せん、人の心情を理解するということに、明確な改善指導法があるわけではないだろう。ひとりひとりの治療のためには、いろいろなことが生じるであろうが、少なくとも理解するという点では、怖じる必要はない。
 私も子どもたちに勉強を教えている以上、小学生の中に、この本にあるような対応をする子と出会うことがある。それで、読んでいて、たいへんリアリティをもって読み進めることができた。
 こういう点では、著者である母親の願いは、届いているのかもしれない。私は、この一冊で、ずいぶんとこの症候群のことが、身近に思えたからである。
 子どもを見つめるすべての人が、このような本で、問題性について認識しておく必要があるのではないかと思う。




Takapan
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