本

『やさしい紙ヒコーキ』

ホンとの本

『やさしい紙ヒコーキ』
いいじまみのる
いかだ社
\2100
2011.12.

 図書館版と大きく記されているから、一般書店で入手できるのかどうか分からない。型紙がついているというが、コピーして使ってよいらしい。その通りに折れば、よく飛ぶ飛行機かできあがりというわけだ。
 ただし、安易なそれだけの本というわけでもない。ここには、たいそう奥深いものが隠れている。それは、通常見ない飛行機が紹介されているというのもあるし、マニアックな(というと失礼か)飛ばし方も教えてくれているというのもあるが、私が感心したのは、飛ばし方の微調整の方法である。
 私たちが紙飛行機を作ったとき、飛ばしてみて、よく飛んだと喜ぶこともあるし、駄目だと思うときもある。だが、駄目だったらどうするか。また別の紙で作るのか。それもいい。けれどもそれを続けると、いくら紙があっても足りなくなる。経験的にこうすればよいと思うこともあるし、多少の知識から、翼に折り目を付けるなどということもあるのだが、この本はさすがにその道のプロの目である、翼のバランスを見ることひとつとっても、チェックポイントが実に明確で、分かりやすい。それでいて、細かい。そこを抑えればうまくいく、というところがたいへんよく説明されている。
 ことさらに難しい原理をそこで解説するわけではない。すべては、よく飛ぶためだ。思うように飛ばせるようになるためのコツといったものが、ふんだんに載せられている。
 そして、いろいろな競技法も紹介されている。ほんとうに楽しい遊び方がたくさんあるものだ。イベント向きに一度にたくさん華やかに飛ばすやり方など、きっと誰もがやってみたくなるだろう。
 またこれは教育的配慮も大きい。巻末に、幼児には、小学校低学年・高学年には、その他外国人には、といった指導法、注意点などが寄せられている。こうした小さな配慮が、その本の良心のようなものを示すものである。
 本は一週間で次第に高い段階に入っていけるように、この順番に試してみていけるようになっている。そうやっていけば、表紙にあるように「高性能な完成機スーパーヒーローをつくろう!」という目標が達成できそうだ。そう。「1日1機、7日でマスター!」とも掲げてある。
 スーパーヒーローも素晴らしいが、ただ丸めただけの「かぐや姫」、私は好きだ。流体力学は実のところ解明の難しい分野だと言われるが、空を飛びたいという人類の夢を、いとも簡単に実現できるこれだけの仕組みは、たいそう神秘的なものに見えてしまうのだが、如何だろうか。




Takapan
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