本

『世界のart図鑑』

ホンとの本

『世界のart図鑑』
レベッカ・ライオンズ,エミリー・シュライナー監修
青柳正規日本語監修・松浦直美翻訳
ポプラ社
\3990
2010.9.

 子どもでも読める美術史である。本来子どものための本のはずだが、どうしてどうして、大人が読むと実に楽しく読むことができる。それほどに的確に分かりやすく仕上げられた、良い本なのである。
 百科事典のような大きな本に、人間の歴史の古代からすばらしい美術鑑賞に値する作品が遺されていることを学ぶ。ラスコーの壁画やエジプトの画、後にはフレスコ画の描き方や特徴など、子どもたちの、いや素人なる大人たちの興味をそそる内容である。ダ・ヴィンチから北斎までは初期のアートだと分類されている。次が発展するアートで、印象主義からストリートアートを含む現代美術へと流れていく。最後の章は、立体のアートである。ブロンズ像の作り方をこれほど簡単に分かりやすく伝える本に、私は出会ったことがない。
 絵の具の色の古来の作り方やバロックの性格と代表作をこんなに整然と揃えた本というのも珍しい。すべて写真や資料グラフィックで、美しい写真である。見てそれと分かるように配慮されているものの、詳しい解説を、それでも簡潔に述べているあたり、私も何かを発表するときにこれほど分かりやすくできるのだろうかという挑戦状のようにもこの本が見えてくる。
 子どもたちが、図工の時間に挑戦できるような紹介もなされている。モザイクもこのようにすれば現代にできるのだ。と示されるが、こうした誘いは、現実的な興味にすぐに結びつく。実によくできたあり方だ。
 それがまさにアート。芸術と訳してしまうとなんだか違うものになってしまうかのような、アートの図鑑だ。それは私たちの生活を取り巻いている。しかもまた、それを人類の遺産にもなりうるような財産的価値を有する作品としても存在する。そうしたアートの数々が、実に適切に、それでいて多くの情報量と共に、この本に満ちている。美しい写真が厭きさせない。こうした感覚が、日本の美術教育のためにも役立つとよいと切に願う。日本の中でも、こんな楽しい美術のスポークスマンがいてほしいと思うのだ。
 我が家の小学一年生も、この本にはまった。何度も開いて隅々まで見ていた。それほどに面白いのだ。役に立つのだ。これはぜひ一度ご覧になって戴きたい。楽しいこと請け合いである。




Takapan
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