本

『時間とは何か』

ホンとの本

『時間とは何か』
池内了
ヨシタケシンスケ絵
講談社
/\1500
2008.7

 哲学的なタイトルの本だと思ったが、そうではなく、専ら自然科学系統の議論であった。
 堅苦しく捉えているのではなく、時間というものを人間がどのように科学的に把握してきたのか、またそのための道具などの紹介と共に、中学生で十分納得できるような形で説明した本である。つまりは、子どものための本なのであるが、いつも繰り返すように、子どものための本ほど、分かりやすいものもないわけで、大人が負けじと読むがよろしい、という感想となる。
 私は個人的に関心があったものだから、ここに紹介されていることは殆どどこかで聞いたことがある。だが、一般にそれほど知られていることだとも思えず、読者は知的な冒険が楽しめる題材となっているのではないかと思う。
 お話は、当初は時間の決め方などにページを割き、カレンダーの話などを楽しませる。やがて自然が刻む時間についての紹介で、生物の中の時計、さらには自然あるいは宇宙のリズムというものもあるのだと教えてくれる。なかなか多岐に渡り、厭きさせないで楽しませてくれると感じる。
 タイムマシンの紹介は、ありきたりではあるけれども、今時は案外こうした基本的な知識をきちんと伝えるものがなくなってきた。科学の基礎知識については、このような誰にとっても面白く聞ける話は、広く知れ渡るようにしなければならないだろう。
 心理的な時間についての説明もあり、それで本を締めくくることになる。やはり、中高生に開いてもらい、考察してほしい本であろうかと思う。
 いや、一般の大人の方々もまた、これで思いめぐらす機会をぜひもって戴きたいと思う。あとがきでは、哲学の時間論を紹介できなかったとしてあったが、ある意味でそんなものは要らないかもしれない。時間についての知識のカタログではなく、時間そのものに読者一人一人が考え巡らす方向性を与えるというのが、著者の大切な目標であるのではないかと感じとったからである。
 なお、流石だと思ったのは、索引がついていること。科学的な書物には、どんなに入門的なものであれ、子どもが使うものであれ、この索引というものが、付いていなければならないと私は考えているからである。
 それにしても、時間とは、何なのでしょうかねぇ。




Takapan
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