本

『パワー・フォー・リビング』

ホンとの本

『パワー・フォー・リビング』
アーサー・S・デモス財団
\0
2007.1

 無料配布の本をご紹介してよいものかどうか、よく分からない。
 テレビなどのメディアで派手に宣伝していたので、怪しいものだと人々の目に映ったかもしれない。広告に立った人たちが変な人たちではないと分かっていたので、その点で私は疑心暗鬼になることはなかったのだが、なにぶん情報がないもので、どんな団体であるのか、どんな本であるのか、知らないとしか言いようがなかった。
 本を申し込んで、入手した。
 すぐに読めた。良い本だった。
 アメリカの福音的牧師の手による文章を中心に、生き生きと信仰への誘いが綴られていた。その喩えに輝きがあった。伝道集会でもこのような語りが、聴衆の胸を突くのだろうと予想された。
 このたび日本でキャンペーンが行われたのが、゛とういう背景に基づいているのか、それも謎である。特定の宗派でないとして秘密裡にしていることが、却って怪しまれる背景となっているようでもある。産経新聞が拒絶しているのは、当然仕方がないが、毎日新聞も拒んでいる。それはそれで、ジャーナリズムも一つの姿勢だろうと思う。ただし、初詣や創価学会などのCMがどうなのか、それは私が今知ることのできない部分である。
 また、本を送り、莫大な広告費を出すくらいなら、そのお金を、病気の人のために使ってほしい、という、善意からくる、素朴な意見もある。それはそれで切実なので、蔑ろにするつもりはない。だが、寄付をすればそれでおしまいであり、他の人々とは無関係に治療がなされるだけで終わるのだろうが、たとえばこの本を読んで聖書を読んだ、いわゆる「救われた」人が起こされると、そういった病気の人の問題に、もっと多くの人が手を貸すようになることだろう。この本のキャンペーンが、たんなる小さな投資でしかないような結果になることも大いにありうるのである。もしかすると、会計をしていたという、裏切り弟子のユダの解釈にも、このあたりの心理が使えるのかもしれない。それはもちろん、最初の意見者がユダである、という意味では毛頭ないわけなのだが。
 さて、内容に関してだが、新改訳聖書を用いる、いわゆる福音派のグループの賛助もあるような形で、この本は日本人向けに編集されている。いわば、トラクトを、財力ゆえに大きなプロジェクトで配布しているという、派手な構想が実現したというところであるか。
 たしかに、これは福音である。どうぞ安心して、お読みください。間違ったことや、偏ったことが書かれているようには思えません。一つのトラクトの方法としても、この試みは参考になるので、聖書を多数の人に意識させることに成功したという意味では、未曾有の伝道であったと言えるのかもしれない。
 この芽を、私たちがどのように受け継ぐか、ということも、今ある教会がチャレンジを受けなければならないと思う。ここで派閥や仲間意識を優先させるなら、悉く聖書の禁忌事項に触れることになりかねない。
 Power for Living これは「生きるための力」と訳してあるが、そのまま「生きる力」と称してもよいのではないかと私は思った。それは、教育行政がしきりに合い言葉として利用している言葉である。まさに、生きる力は、聖書の中にあったのである。




Takapan
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