本

『マンガ 金正日の正体』

ホンとの本

『マンガ 金正日の正体』
李友情
訳・監修 李英和
小学館文庫
\630
2006.10

 三年前に単行本『マンガ金正日入門 北朝鮮将軍様の真実』として出版されたものを文庫化したものである。
 どのようにコメントしてよいか、私には分からない。訳者「あとがき」によると、韓国ではこの本と正反対の立場の類書がよく売れているといい、この本は、韓国では1998年に出版されたが読者に行き渡ることか許されなかったという。
 それほどに、これは金正日を批判する、というよりも、相当に揶揄している感じもある。事実を言葉で告げているのかもしれないが、そのマンガ的表現が、かなり過激なのである。
 たしかに脅威をもたらす個人である。日本も拉致問題やミサイル問題など、のんびりしていられない課題が多いが、なにせまともに対話ができない状態である。
 中には、徒にその国と指導者をけなす、あるいはひたすらバカにすることで鬱憤を晴らしているような若者も多い。そのことで、日本国内にいる朝鮮学校の生徒たちまでがいじめられている。そのいじめは、日本人ではなくてすべて韓国人がやっている、と開き直る者までいる。
 そして、共通しているのは、そうした人々が、大東亜戦争を肯定する理論を立てることだ。
 かの軍国日本はどうだったか。
 このマンガを読んでいるうち、その軍国日本の姿がここに描いてあるのではないか、という錯覚に私は陥った。違うのは、北朝鮮では個人崇拝が専ら個人の権力に基づいているのに対して、かつての我が国では、一部グループが合議体として、天皇という飾りをまつりあげていた点であろうか。
 しかし、このマンガに描かれているような愚かさは、どこか共通のものがあるような気もしてくるから不思議だ。
 私は何も、政治的な決定や誘導をしようというのではない。人間は、自分のことも振り返らなければならない、と言いたいだけだ。マンガに描かれた指導者にも、それが必要であるというのは、本の作者も思っているだろうか。とにかくこの指導者がいなくならなければだめだ、と突き放しているのも確かなようだが……。




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