本

『日本のロック名盤ベスト100』

ホンとの本

『日本のロック名盤ベスト100』
川ア大助
講談社現代新書2329
\840+
2015.8.

 私はロックの歴史に詳しいわけではない。ギターに興味をもった息子のための読み物としてもよいのではないか、と気軽に借りてきたものではあったが、実は大きな収穫があった。
 ここには、著者独自の選択により、日本のロックの名盤、つまりいわゆるアルバムであるが、それがランキング付で100位まで挙げられている。1位は「はっぴいえんど」である。これは、ある意味で定番であろう。もちろん、何を以て「ロック」と呼ぶか、は人により異なるかもしれないが、名盤と呼ぶに相応しいものとして挙げて然るべきであると私も思う。また、あまりにも著者の独断と好みで選んだと見られないためにも、著者は、自分なり客観的な評価であるように努力したことを予め記している。他の評者はまた意見が異なる場合も当然あるだろうが、最大公約数なところで、多くの人に共感されうる内容にしたつもりだというのである。たしかに、ひどく偏っているようには見えない。ただ、2000年以前のものが中心であることは否めない。その点は、この本がランキングだけを見せる本ではなくて、ランキングを通じて、またそのアルバム一枚一枚の評を記した後、日本のロックの歴史はそもそも何であったのか、そういう論を長く展開しているのであって、タイトルのように100だけ紹介して終わりというふうにはしていない。そのために、2000年前後で歴史が変わったという点を論証しようとしているわけであるから、結局1970年あたりからの30年間に殆どが絞られているのは、故無きことではないということになる。その以降は、3枚かそこらではなかっただろうか。
 さて、収穫というのは、ほかでもない。この27位にランキングされた名盤である。それは、小坂忠「HORO」であった。
 ミクタムという会社を設立、日本のゴスペル界に大きな影響を与えた、いやそれを創りだしたと言っても過言ではない、小坂忠牧師である。そもそも子どもの病を通じて信仰に導かれておよそ40年、かつての華々しい音楽的成功と悩み、とにかく高く評価されたその音楽性の賜物は、そっくりそのままキリスト教世界に移築されたのである。今の若い人の賛美の世界を拓いたと言ってよいと思うし、そんな小坂さん自身、当初はずいぶんとキリスト教界に叩かれたものであった。
 今の身分は、宣教牧師というものらしい。奥様が牧会者であるが、忠さん自身も音楽を通じて伝道に邁進していることには違いない。関東の教会はペンテコステ系のものだというが、音楽がきっと盛んなのであろう。
 他方、かつての自分の音楽的な才能から生まれた作品を、新たな視点で録音し直すなどの活動もしており、またテレビでもその歌が紹介される機会もあり、知る人ぞ知る、ロックの偉人としての地位を築いていると言える。
 その名前が、居並ぶ日本の代表的アーチストの中にしっかり上位の一人として紹介されている。これが、大きな収穫だと言えた。音楽に詳しい方は、さらにこの本を隅々味わって戴きたい。音楽シーンを評するに、避けられない一冊となっているのではないかと思う。




Takapan
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