本

『図解 日本の文字』

ホンとの本

『図解 日本の文字』
沖森卓也・笹原宏之・常磐智子・山本真吾
三省堂
\2100
2011.5.

 あらゆる角度から見た、日本の文字についての基本知識が掲載されている。いや、もはや基本とも言えないくらいなのだが、この本が一冊あれば、日本の文字についての当面の疑問は全部解決するだろう。史料も十分写真などで紹介されているし、歴史的な背景や実例などを通して、具体的に文字の使われ方も意義も明らかにされている。
 それを理解するためには、そもそも文字とは何かという定義あたりから必要になる。世界における様々な文字における共通項と、そこから見られる多様性の中での日本の文字の立つ位置が示されるという、実に堅実な説明がとられている。それは学問的であると同時に、私たち読者も頭の中をきちんと整理することができる、見事な組織的・体系的解説となっていると思う。
 目次から拾ってみる。文字の機能と特性・文字の分類とその歴史・日本における文字・漢字の起源と展開・書体・字体・漢字の構成・漢字音・訓・国字と国訓・当て字・万葉仮名・平仮名・片仮名・明治初年までのローマ字・ローマ字の綴り方・訓点の方法・濁点・半濁点・踊り字・句読点・さまざまな符号記号・仮名遣い・送り仮名振り仮名・外来語の書き方・漢字政策・印刷の歴史・印刷の文字〜明治以降(近代)・日本の書道・文字遊び。
 どうだろうか。知りたいことはすべてあると言っても過言ではないくらいではないだろうか。
 私は興味ある分野でもあったので、知っていることもたくさんあった。しかし、概ね「へぇ」と口走りながら読み進むしかなかった。特に、最初のほうで自ら情けないと思ったのは、「文字」の「文」と「字」の違いであった。単体の象形文字と指事文字が「文」で、それらを組み合わせた会意文字と形成文字が「字」だとさりげなく書かれており、ちょっと打ちのめされた。
 最後はギャル文字やアスキーアートまで辿り着いていて、文字を説くとあらばそれもありかとも思うのだが、もはや研究者もマンガ世代である。思わず笑ってしまったのが、当て字の例。「ひと」と読ませる漢字がどのくらい種類があるか実例を挙げてあるところで、坂井泉水の歌詞から、私の贔屓の「めぞん一刻」まで出てくるのである。
 やたら意見や思いこみばかり主張している類書もあろうが、これは淡々と事実を教えてくれる。私たちが物事を考えるときには、このような冷静な資料がほしい。意見の押しつけでなく、事実としてのありさまを提示してくれるものは、ありがたい。手許に置いておくに相応しい一冊であると言える。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system