本

『福岡女たちの戦後』

ホンとの本

『福岡女たちの戦後』
戦後の女性記録継承プロジェクト
福岡女性史研究会
\500+
2016.4.

 これは他地域では入手しづらいかもしれない。2016年第1号だそうで、今後も史料が集まれば次々と発刊していこうということではないかと思う。
 戦中の証言者が寿命を迎え、激減しているのは知られているが、考えてみれば戦後の時期を証言できるほどに知っているという人も、限られてきているはずである。いくら老年代が多く残っているとはいえ、戦後10年間のことを明確に告げられる人、当時大人であった人は、相当な年齢になっている。そこで、急ぎ証言を集めたというものである。特に、女性に的を絞ることにより、歴史の中で埋もれていた部分を明らかにする目的がはっきりしている。男だけの歴史ではないのだから。
 しかも、これは福岡の地元に限っている。これがいい。自分のよく知る地域における過去を知ることは大切なことでもあるし、また調査員自身よく分かることとなるからである。すると、案外住んでいる場所の過去について知らないということが分かってくる。これは私もそう思う。きっと昔の人には常識だったことも、後の世代には何故そのような地名なのか、由来があるのか、全く分からないであろう。
 しかも、女性史である。証言したくないこと、忘れたいことが多々現実にある。男でもそうなのだから、女性ならばなおさらである。売春防止法が成立するまでは法的に成立していたその仕事を、誰が好んで昔話として伝えるだろう。この本のすごいところは、そういう証言を集めているところである。それはその次代のひとつの真実なのであって、社会全体を考えるときにも、無視できるはずのない出来事であったはずである。しかしわざわざ証言する人もおらず、追及もしないとすれば、歴史の文字に刻まれず、過去として遺らない可能性もあるのだ。それで本当に歴史を知ることになるのか。歴史を理解していると言えるのか。これは貴重な調査である。
 アメリカ軍が占領する。連合軍という名でも実質米軍である。基地の街としてどこが栄えていたのか、そのとき人口はどうなっていたのか、また証言してくれた人の話を基に、どのような生活が営まれていたのか、これが明らかになる。
 後半は、地元で福田昌子衆議院議員の記録となっている。そうした流れでこの団体ができているのだろうと推測されるが、それはそれで、女性代議士の先駆けの姿は、戦後史の重要な証言だとも言える。選挙区で当選した女性の衆議院議員はここでまだ三人しかいないというのだから、福岡が如何に女性の進出基盤として機能していないかが分かる。その中で、女性に的を絞った活動には大きな意味があるだろう。今後のこのプロジェクトの進展があれば見守っていきたい。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system