本

『キリスト教入門』

ホンとの本

『キリスト教入門』
キリスト教学校教育同盟編
創元社
\900+
2015.1.

 学校の教科書として作成された。キリスト教精神により建てられた学校における、キリスト教教育、キリスト教紹介のような時間のためのテキストである。中高生くらいを標準に置いてあるように見えるが、大学でも問題はないほどの内容である。とかく、専門的な知識や深い理解を求めてしまいがちな大学であるが、要するに基本は何か、押さえておくべき大事なことは何か、となると、この本で十分であると思われる。
 そこで、これは教会でも開いてみると、これから洗礼を受ける人の学習に、なかなかよいのではないか、ということになった。
 大人にとっては、無理なく理解ができる。また、知識としては無駄がない。たしかによく練られた本であり、バランスもよくできている。
 こうなると、関心が集まるのが、福音の観点からして、どの程度の信仰の立場で聖書が説明されているか、というあたりだろうか。結論的に言えば、現代一般社会の視線から最大公約数的に受け容れられている程度だ、とでも言えばよいのではないかと思う。信仰に属することを読者に押しつけはしない。しかし、なんでもまた作り話だ、というのも適切でない。そこで、二千年前の人々がその言葉で何を伝えたかったのを考えてみよう、という誘いである。学生相手であるから、このように探求心を求めるような誘い方もあるわけだが、科学との競合を心配するようなことでなく、人間の真実はどういう方向にあるのか、ということなども考えさせようとする、教育的配慮に基づいたものであると言えるだろう。
 最初の章は、「はじめてのキリスト教」と題して、とくに礼拝に特化した形でそこで使われる言葉の意味を伝えようとしている。ミッション系の学校だと、チャペルでの礼拝などにいわばいきな連れて行かれるような面がある。そのとき、礼拝のなんたるかを自ら求めてきたというわけでもないのだから、その意義やマナーなども知っておく必要がある。また、聖書との関係や意味についての理解もやがて必要になってくる。そういう意味で、礼拝のプログラムにあるひとつひとつの事柄が説明されているのだが、確かに中高生としてこれほどにまで知っていたらなかなかのもの、と言わせるような内容が詰まっている。
 次の章では、福音書と使徒言行録のおよその内容を駆け足で紹介する。
 そして最後の章では、旧約聖書と中間期を経て新約聖書の時代へ入っていく、ユダヤ人から続く歴史がたどられるが、少ないページ数で全部を網羅することは難しい。創世記における創造や罪の問題がきちんと示される。福音書は、よく知られた箇所を中心に、聖書にどのように書かれているかを紹介していくことになるし、奇蹟やたとえを駆け足で撫でていくようなものとなっている。いくつかにすぎないが、キリスト教や聖書の用語解説も開いてみると、また聖書を読んでいく中で、理解が深まることだろう。
 使徒信条や主の祈り、十戒などをまとめた巻末史料は、教会で使われる語の意味を教えてくれ、なるほど学生のためには非常に行きとどいた構成・内容となっている。
 そういう中高生のための本だという色眼鏡で見てしまうようなものではあるが、簡潔なこの解説の教科書は、大人にも十分対応できる。時々問いが投げかけられるが、これもいかにも教科書風というわけで、その練習問題のような質問をクリアしていくことにより、さらに聖書や信仰、教会生活といったものに、より近づいていくことになるのだろう、というふうに思う。
 中に盛り込まれた写真は、カラーではないが、特に前半では写真があればこそ理解できるということもあり、歴史的な史料を見るという意味でも非常に有用である。名実ともに「教科書」であると言える。
 長年信仰している方も、油断はならない。そういう背景があるのだ、意味が思っていた以上に深かった、などの感想を抱くのではないか、というほどの内容である。内容そのものには、立場の相違が人によりあるかもしれないが、一定の意味合いが読み出されるのが普通である。たとえ話など、解釈が難しい場合もあるのだが、基礎にはいつ戻ってやり直してみても損はないと言われるように、ここでも、初心に返るという考え方が成立するのである。




Takapan
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