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『13歳からの論理ノート』

ホンとの本

『13歳からの論理ノート』
小野田博一
PHP研究所
\1155
2006.10

 サブタイトルに「考える」ための55のレッスン、とある。細かく項目を分けて挙げて、それらを一つ一つ理解していくことによって、先へ進むことができるように配慮してある。
 これはまいった。これだけ緻密な論理に従って文章を築いていかなければならないとしたら、私はいかに非論理的に文章を愚弄しているか知れない。感情や思いこみで説得しようとしていたり、相手に勝ったつもりでいたりすることばかりである。自分だけの論理は、相手に届いていない、というのも尤もである。
 読み手や聞き手にとって、論理的であるような述べ方をしなければならない、というのである。たしかに、その通りだ。自分だけの論理でものを言うことが、如何に空しいものであるか、そして相手がせせら笑うかは、幾多の場面で実証済みである。
 著者はチェスの名手だというので、ひたすら論理だけの世界における営みについては、エキスパートである。一手読み間違えれば勝敗の行方が揺れ動くという勝負の世界であるだけに、論理が成立しているか否かという「読み」が厳密になるのだろう。それを学ぶ必要は大いにあるはずだ。私たちは、もっと考えなければならない。また、考えているフリをしている輩から身を守るためにも、飛躍した論理についてはノーと言わなければならない。言えなければならない。
 他方、一切のレトリックを否定して議論を行うのでなければならない、というほど、議論そのものが味気なくなっていくのも、はたしてどうなのか、という気持ちも正直ある。しかし、そういうのこそ、著者に言わせれば、無駄であり危険であるということなのだろう。
 もう、どうあがいても、私のような書き手には、厳しいお咎めしか飛んでこないだろう。
 それは覚悟の上で、ひとつ申し上げたい。この本のタイトルにある「13歳からの」の意味が分からない。少なくとも、論理的に説明されてはいないし、中には全く触れられていないようだ。タイトルそのものは、極めて情緒的に組まれたか、あるいはその根拠を示すのを忘れたか、いったいどうなのだろう。




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