預言書アモス

チア・シード

アモス7:10-17 

アモス

ソロモンの次の代で、旧イスラエルは南北に分裂します。その後、いわゆる預言者が現れます。しかしそれぞれの預言者については、正体不明であることが多く、これを穿った見方をすると、後の世の歴史記載者が、かつての時代に警告を発した人物を想定して描いた可能性も否定できないところです。つまり、捕囚というイスラエルの民の屈辱を乗り越えるために、神は正しいが民が、とくに権力者たる王が悪かったのであるという歴史を刻むのが歴史記載の目的であり、その際、神は預言者というものを通じて絶えず教えと警告を発していたのだが王は聞かなかった、というストーリーを繰り返したというのです。
 
聖書を貶めるような言い方をするつもりはありません。真偽のほどはさておき、預言者はそのように、南北イスラエルの王たちに、神の意志を伝える役割をした言葉を発し、それがたくさん記録されているということは間違いないでしょう。アモスはその中でも早期と考えられ、活躍した時代が、ヤロブアム二世の時代だと記録されています。この王はあまり列王伝の中で大きな役割を担っていませんが、北イスラエル王国の繁栄の時代に位置し、また北王国が独立したときの最初の王ヤロブアムの名を受けているため、イスラエル国の象徴的役割を担ったとも見なされます。
 
宗教的なブレインとして、王の側近に、祭司アマツヤがいたと想定されます。アマツヤは、アモスが北イスラエルが滅亡するかのようなことを言い立てていることに我慢がならず、王の名によりこれを追い払い処分しようとして、王にその許可を求めます。王が殺され民が連れ去られるなどという男を追い払うことをお許し下さい。そうして、アマツヤはアモスの前に現れます。
 
「先見者」とアマツヤはアモスを呼びました。これは、預言者とは違います。しかしもともと預言者は、先見者のように呼ばれていた時期がありました。サムエルがそのように、未来を見る者と受け取られていたような記述があります。しかし預言者は、神のことばを預かる者という意味で、たんに未来云々ではなく、広く神意を伝える役割を担う者としてだんだん認められるようになってきていたのでした。しかしアモスはその預言者の中では走りのようなものですから、いまなお先見者という味方が一般的であったのかもしれません。これはここでは、蔑称のようにも聞こえます。あるいは、わざわざ尊称を用いて、田舎者のアモスを皮肉っているのかもしれません。
 
「ユダの国へ逃れ」よと命じます。アモスは南ユダ王国の首都エルサレムの南にあるテコア出身であると記され、そこで農業を営んでいたようにアモス書には書かれています。それが、北イスラエルが主に反した態度を取り続けるために、なんと農民の一人であるアモスが、北へ来て王と民に警告を与えていたのでした。それは確かにうるさい邪魔な奴であったことでしょう。そしてそんなに力のない人物だと分かっているから、アマツヤも、おとなしく故郷に帰っておけば命だけは助けてやろう、という上からの目線です。
 
しかしアモスは、自分は家畜を飼い、いちじく桑を栽培するだけの者だ、ただ、主が私を取ったのだから行っているだけだ、と反論します。主が私を「取った」という表現に注目しましょう。私の意思や考えで何か発言しているのではない、ただ自分は主に取られたのだ、ということです。私たちは、主が自分を取った、という意識をもったことがあるでしょうか。これはすばらしい信頼であり、確信です。自分が何かをするときには、主が取ったのだ、という信頼の下に行いたいものです。
 
ベテルで預言をするな、とアマツヤに言われたアモスは、強烈な審きを返しました。このベテルは、ヤロブアム一世が分かれ出たとき、人民の宗教心をひとつに集めるために、金の子牛をこのベテルに置いたのでした。つまりは、偶像礼拝の創始者でもあったヤロブアム一世の名を受けた王がこのヤロブアム二世だったのです。ここから、イスラエルは一筋に滅亡へのカウントダウンが始まった、そのときに預言者が警告を発し始めたのだ、と聖書記者は言いたいかのようです。
 
金の子牛のときにも、主を拒みました。そして二世の時代の祭司アマツヤもまた、主を拒みました。偶像の本拠地であり、しかも主はここに在りなどと詐称していた町でもう発言するな、帰れ、と脅されました。アモスはしかし、それに屈せず、言うべきことは堂々と告げました。だから、やはりアモスは預言者なのです。さて、いまの時代、同様な脅しや言論の不自由さの闇を感じています。私たちはアモスになれるでしょうか。自分の仕事は別にもっていながらも、どうしても言わねばならないことを、脅しがあろうとも、言い続けることができるでしょうか。


Takapan
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